日英翻訳の訳例とポイントを紹介します。 原文: (子の看護休暇) 第XX条 小学校の始期に達するまでの子を養育する社員は、負傷しもしくは疾病にかかった当該子の世話を行うために、または当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、1年間につき5日(当該子が2人以上の場合は10日)を限度として子の看護休暇を取得することができる。 訳例: Article XX Sick/Injured Child Care Leave An employee who is raising a child who has not yet reached school age may take leave to care for said child when said child is injured or ill or to have said child receive vaccinations or medical examinations, limited to five days per year (or 10 days if said employee has two or more children). (56 words) ポイント解説 ポイントをわかりやすくするために、以下の訳例(修正前)と比較して解説をします。 上記の「子の看護休暇」の文章は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づいています。この法律文の対訳(日本語・英語)が日本法令外国語訳データベースシステムのページに掲載されていますので、このページの第十六条を参考にして訳語を選びました(本記事の一番最後に対訳を引用しています)。 訳例(修正前): Article XX Time Off for Sick/Injured Childcare An employee who is taking care of a child before the commencement of elementary school may obtain leave to look after said child in the event of injury to or the illness of said child, or in order for said child to receive vaccinations or undergo medical examinations, with a limit of up to five days per year (or 10 days in cases where said employee has two or more children). (71 words) ポイント1:文脈にあわせて正しい訳語を選択する 「子の看護休暇」の訳語の選び方で気をつけましょう。 修正前の訳例では、「Time Off for Sick/Injured Childcare」としています。私はこれを「Sick/Injured Child Care Leave」と修正しました。 訳語自体はいずれも法務翻訳の定番サイト「日本法令外国語訳データベースシステム」で「文脈検索」をすれば上記の2つの訳語が見つかります。ここから、どちらかに絞り込みます。 訳例(修正前)で使われている「Time Off for Sick/Injured Childcare」は長いし、特に最後の「childcare」が若干不自然な言葉と感じます。 これに対して、「Sick/Injured Child Care Leave」の方が自然な表現であると感じますし、Google検索で確認をしたところ一般的によく使われているようですので、私はこちらを採用しました。 もし「Time Off for Sick/Injured Childcare」をどうしても使うのであれば、「Time Off to Care for a Sick/Injured Child」と修正したほうがより自然だと思います。 ポイント2:短く簡潔な英文にする(Short & Concise) 訳例(修正前)は71ワードであり、私の訳例は56ワードです。社員に読んでもらうためには、Short & Concise( 短くて簡潔 )である必要があります。 訳例(修正前)は法務文書っぽくてよい英文だと思われがちですが、法務文書に慣れていない社員にとっては難解な文章です。 どのような社員でも理解できるようにストレートに分かりやすく書くのがキャシー流。特に、母国語が英語ではない外国人も読者になりうるので、短くて簡潔な英文で書くことが重要だと思っています。 以下のように表現を短くしました。 who is taking care of →who is raising(who is を削除して raising だけもかまいません。更に短くなります。) in the event of injury to or the illness of said child → is injured or ill in order for said child to receive vaccinations or undergo medical examinations → to have said child receive vaccinations or medical examinations with a limit of up to five → limited to five in cases where → if 以下のように平易な表現を使いました。 look after → care for 両者の言葉の意味に大きな違いはないのですが、今回の文章のタイトルに合わせて言葉を選択しました。タイトルは「look after leave」ではなく「child care leave」ですので、care for がよいと思います。 obtain leave → take leave takeの方が一般的です。 before the commencement of elementary school → who has not yet reached school age commencement の用語はかしこまりすぎて重いと感じますので、より平易な表現にしました。こちらの修正はお好みでもあると思います。 (参考)
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 日本語: 第十六条の二 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話又は疾病の予防を図るために必要なものとして厚生労働省令で定める当該子の世話を行うための休暇(以下この章において「子の看護休暇」という。)を取得することができる。 英語: Article 16-2 (1) A worker who is taking care of a child before the commencement of elementary school may obtain leave to look after said child as specified by Ordinance of the Ministry of Health, Labour and Welfare as necessary for taking care of or preventing the illness of said child in the event of injury to or the illness of said child (referred to as "Time Off for Sick/Injured Childcare" hereinafter in this chapter) upon application to said worker's employer, with a limit of up to five working days per fiscal year (or ten working days in cases where said worker has two or more children before the commencement of elementary school to take care of).
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